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学問の部屋

1:mespesado :

2018/08/05 (Sun) 16:33:15

host:*.itscom.jp
 この放知技には、政治・経済だけでなく、純粋に学問的な内容である日本古代史やら三上文法やらビッグバン理論などについての書き込みがときどき見られます。
 でも、それらの単発的な書き込みでは他の書き込みの中に埋もれてしまうのがもったいないと思ったので、学問関連の話題を中心に書き込むスレッドを作りました。
 是非ご利用ください。
3:mespesado :

2018/08/05 (Sun) 17:51:09

host:*.itscom.jp

【日本語文法】

 それじゃ、早速一つ目の話題を。

 今はあまり言われなくなったかもしれないけど、昔はよく「英語は論理的

な言語だ。それに対して日本語は非論理的だ」などという「自虐言語学観」

が世に蔓延していました。例えば英語はどんな文にも必ず主語がただ一つ存

在する。それに引き換え、日本語は、しばしば主語がなかったり、逆に

■ ぼくは、ウナギが好きだ。

のように、「ぼく」と「ウナギ」の2つも主語があることがある、などと言

われたものですが、明石原人さんが三上文法を紹介していることからもわか

るように、日本語の「は」という助詞は「格助詞」ではなく、それの上位に

位置する「主題」ともいうべき語を表す、という西洋語とはまるで異なる文

法体系になっているだけだった、という話でした。

 さて、今回は別の話で、「日本語は非論理的」の例として、次のようなこ

とが言われることがあるのを取り上げます。

-----------------------------------------------------------------------------

 日本語では、「述語」というとき、品詞としては「動詞」「形容詞」「形

容動詞」の3種類のいずれかが「述語」になることができます。例えば

■ 馬が走る。 ……… 述語は「走る」で、これは「動詞」

■ 桜は美しい。 ……… 述語は「美しい」で、これは「形容詞」

■ この現象は奇妙だ。 ……… 述語は「奇妙だ」で、これは「形容動詞」

 さて、動詞を述語に持つ普通の肯定文、例えば上記の「馬が走る」の否定

文を考えると、

■ 馬が走らない。 ……… 述語(?)は「ない」という形容詞

こういう語尾の「ない」を形容詞と言っていいのかどうかはわかりませんが、

この文を活用させてみればわかるように、形容詞と同じ活用をしますから、

事実上、形容詞と言っていいと思います。

 さて、このように同じ文の述語部分が、肯定文なら「動詞」なのに否定文

だと「形容詞」になる、というのはいかにも非論理的に見えます。英語の場

合だと、形容詞や形容動詞で終わる文というのは be 動詞 + 形容詞 の形を

持つ文に対応しますから、英語の場合、

■ A horse runs.

の否定文は

■ A house does not run.

で、この場合「述語」は does が担っていますが、肯定文の場合と同じく動

詞である(すなわち be + 形容詞の形にはならない)ことに変わりはありま

せん。まあ、英語の否定文ってちょっと特殊なところがあるので、フランス

語の場合を考えてみます。フランス語では同じ文を

■ Un cheval court.

で、その否定文は

■ Un cheval ne court pas.

で、いずれも述語は動詞 court のままで変わりません。

 だから英語やフランス語など欧州語との対比で見ると、日本語はいかにも

非論理的に見えます。

 ところが、これって単なる「西洋かぶれ」なんですね。

 なぜなら、「動詞」ってそもそも「動作を表す品詞」なんですよね。だか

ら、肯定文の場合、馬が「走る」という動作を行うから、述語は「動詞」な

んです。

 ところが、この文の否定文はどうでしょうか?

 「馬が走らない」、つまりこの場合、馬は「走る」という動作を「しない」

のですから、「動作をしていない」、つまり「動作をすることを表す」動詞

を使うのは不適切だということになるじゃないですか!

 むしろ走るという動作をしていない「状態」を表すんですから、まさにそ

れは「形容詞」の役割のはずです。

 だから、日本語の場合、たとえ動詞を述語に持つ文でも、その否定形は形

容詞を述語に持つ、ということで、見事に合理的な文法になっているんです。

 日本語って何て論理的なんだ!

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